君の声が、僕を呼ぶまで
そっか。

何が原因か分かってなかった。


大樹は、ずっと沙羅が好きだったんだ。

きっと、勘違いして、僕が目障りだったんだろう。


最初は、小さなヤキモチや僻みからくる、嫌がらせのつもりだったのかもしれない。

でも、その火種は、理由もなく、燃え広がる。

他の皆にとっては、『面白そう』、ただそれだけが理由だっただろうから。


パタリと止んだのは、沙羅が僕を無視したのを見て満足したからなのか。

周りの皆が、苛める事に飽きたからなのか。

それとも、大樹が、収拾がつかなくなりそうな事に、恐怖や罪悪感を感じたからなのかは分からないけど。


いろいろと明らかになったとして、僕の傷は消えない。

大樹は、人を殴った拳の感触に戸惑いを隠せずにいるみたいだったけど、僕は、言葉で殴る事の方が、どれだけ強くて重たいかを知っている。


こんな唇の傷なんて目じゃないくらい、人の心に見えない傷を作るんだよ。
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