君の声が、僕を呼ぶまで
【サラ】がROOMを立ち上げた。

僕は、いろんなものを避けたくて、入室するのを躊躇った。

でも、きっと【サラ】は、何かを伝えたいんだと思う。



>【サラ】:…ここは、自由に喋れるから、好き。

>【サラ】:ここなら、きっと、私の声は自由。

>【サラ】:ここなら、きっと、気持ち悪いって言われる事はないと思う。

>【サラ】:アキとサクラは、本当の私を知らなくても、きっとここにいてくれるから。


そうだよね。

ずっと、【サラ】は、自由に喋る事を望んでいたんだと思う。

ここで明るく喋る【サラ】は、本当に楽しそうだった。

画面でチカチカ淡く鋭く光る文字が、電子信号の羅列による無機質なものに見えたとしても、僕等はちゃんとそこにいたよ。



>【アキ】:僕も昔、女みたいだって、「気持ち悪い」って、皆に言われて、うまく言葉が出なかった事、ある。


>【アキ】:本当のサラを知ってても知らなくても、サラの声は、ちゃんと届いてる。



でも、本当の貴女の声を、僕は知らない。

知っているのは、その傷が痛むという事。


ここで僕の弱さを曝け出したとしても、本当の貴女には何も届かないという事。

弱い者同士の傷の舐めあいなんて、きっと求めていない。


現実での本当の貴女を知ってても、僕は何も出来ない、弱い人間だ。

君が好きなのに。


どうすればいいのか、本当に分からないんだ。

何が出来るのか、本当に分からないんだ。




ごめんね、【サラ】―――相川さん。
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