君の声が、僕を呼ぶまで
高校は、同じ中学の子がほとんどいなかったから良かった。

智秋にとっても良かっただろうし、きっと私にとっても。

…都合が良かっんだと思う、いろいろと。

また、そんなふうに、私は自己弁護ばかり。


「智秋、その黒ネコ柄の絆創膏、どうしたの?」

「ん、ちょっとね」

久々に見る、智秋の穏やかな表情。

ずっとその絆創膏を、お守りみたいに持ち歩いてた。


「智秋、何見てるの?」

「すごく、綺麗な、栗毛色のクロネコ」

遠くから、保健室を見ていた。

遠くから、彼女を見ていた。


本当に、綺麗な子。

何となく儚げな雰囲気が、余計に美しさを強調しているようで。

どうしてかな、智秋と似ている気がした。

そして思った。

彼女は、きっと、智秋を傷付けたりしないんだろうなって。


高校生活が、今度こそ智秋にとって、良い思い出だったっていえるようなものになって欲しい。

私の願いは、私の罪を赦してもらうためのものなのかもしれない。


それでも、どんな形であれ、智秋には穏やかに笑っていて欲しかった。
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