君の声が、僕を呼ぶまで
冬島先輩が保健室のドアを開けた。

山崎先輩は、1人、座っていた。

「…なぁんだ、陽ちゃんか」

私達をチラっと確認して、またふいっと目を逸らす。


「なぁんだ、じゃないだろ」

「今日は雪人先生が戻って来る日だから、帰らずに待ってるのに」

拗ねたような不機嫌な声で言う。

それでも、あの時とは違う、まだ軽い声。


「お前さ、何であんな事言ったの?」

「あんな事って?」

その言葉に、冬島先輩が、少し苛立った声で言う。

「分かってるくせに」

「怒る陽ちゃん、きらーい」

あくまで、軽く返す山崎先輩。

それが、余計に冬島先輩を苛立たせるって分かってるはずなのに、わざとそうしてるっていうのは、何となく分かる。


「お前さ、そんなに人の痛みが分からないようなヤツじゃなかっただろ?」

「それは、陽ちゃんが勝手にそう思ってるだけでしょ? 華の中学の時の噂とか、聞いた事あるくせに」
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