君の声が、僕を呼ぶまで
はらはらと舞い落ちる桜の花びらが地面へ着地するのを許さないかのように、強い風が吹き上がった。


視界が幾重にも重なったピンク色で覆われ、息苦しい程の濃さにむせ返る。


思わず目を瞑り、僕の世界は再び暗転した。

暗い世界の奥底には、何度目を瞑っても消える事のない、真っ暗な記憶が淀み広がっている。


「やっぱり高校生活も、こんな感じになっちゃうのかな…」


落胆の溜息しか出ない。


その重苦しい息が、舞い上がり続けている花びらを小さく揺らしたらしく、その一枚が僕の鼻を掠める。

くすぐったさの奥から、僅かながら新緑の匂いを感じ、僕はゆっくりと目を開けた。
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