君の声が、僕を呼ぶまで
「だから華は悪くない」

山崎先輩は、言い切った。


「そんなわけあるか。塚原先生にも聞いてみろよ」

「そうですよ、山崎先輩。雪兄ぃはそんな事はしないです」


私が山崎先輩に近付くと、思いっきり、制服の胸元を引っ張られた。

タイが外れて、シャツのボタンも1つ2つ、飛んでしまう。


「…っ、華は悪くないもん。悪いのは、雪人先生を盗った小春っちだもん!」

そう叫ぶと、小春の時と同じ、勢いよく保健室を飛び出した。

「華、待て…」

冬島先輩が追いかけようとしたけど、行く手を阻む何かにぶつかった。


「おっと、ごめんね。冬島君?」

「塚原先生!」


「雪兄ぃ!」

ちょうど、出張から帰ってきた雪兄ぃが、保健室へやってきた。

「山崎さんが走って行ったみたいだけど何かあったの?」

山崎先輩が走って行った方を見ながら、心配そうに言う。

「雪兄ぃ、実は山崎先輩が…」

「とりあえず体の事もあるからあんまり無理は…」


そこまで言って、雪兄ぃの表情が変わる。

…何だろう、鋭くて、怖い。
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