君の声が、僕を呼ぶまで
「ねぇ、桜子、本当に何があったの?」

雪兄ぃが私の頬に手を添える。

「え…?」

「違うね、何をしてたの?」

私の耳元に、息がかかる距離で言う。


「…っ!」

私は体にぞわっとした感覚が走るのを感じて、言葉にならない。


「こないだの冬島君と夏野さんと、同じ事?」

「なっ…」

今度は冬島先輩が、何から驚いていいのやら、声を詰まらせる。


「だって、ねぇ、制服をこんなにはだけさせて…」

さっき、山崎先輩に引っ張られて乱れた胸元を、トントンと指して言う。

「それは…」


私の背後に回り込み、ギュッと力を込めて抱きしめた。

ううん、これは、私を捕まえてるんだ。


「冬島君、夏野さんだけじゃ足りないの?」

「な、んでそれを」


「やっぱ、高校生は盛ってるんだね。でも気を付けなよ。外から聞こえるし、中にだって誰かいるとも…」

雪兄ぃが何を言おうとしているのか分かった私は、それを遮ろうと声を上げる。
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