君の声が、僕を呼ぶまで

●空が遺した、寂しさの穴

あの頃の俺は、ずっと泣いてた。

泣く以外に、この気持ちを表現しようがなかった。


17歳のいい年した男が…って、今になって、少しは思う。

でも、止まらない涙。


「雪人お兄ちゃん…」

小さな桜子が心配そうな顔をしてる。

桜子の目も、まだ少し赤い。

その時の桜子は俺と10違うから7歳だったっけ。


どうしていいか分からないというふうに、視線を彷徨わせている。

あぁでもない、こうでもないと、一生懸命考えてくれたんだろうな。


うずくまって泣いている俺の頭を、ポンポンと撫でた。

何度も何度も。


そして、ポツリと言った。

「雪人お兄ちゃん、空ちゃんがいなくなって、私も寂しい」
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