君の声が、僕を呼ぶまで
だけど、空の夢が叶う事はなかった。

それどころか、中学にも高校にも行けなかった。


空は、呆気なく、死んだ。

目を輝かせて、夢を語ったあの誕生日から、数か月も経たぬうちに。


5歳までの命かもしれないと言われた空が8歳まで生きる事が出来た。

それは、とてもすごい奇跡のような事だと思う。

でも、人は贅沢になっていく生き物だから。

毎日、脅えていた。

でも、心のどこかで、このまま元気になるんじゃないかって思ってた。

だって、5歳を乗り越えて、あんなに元気に笑ってたんだから。


覚悟していたようで、覚悟が出来ていなかった。

当たり前だ。

何で、空が死ぬかもなんて、その時どうしようなんて、その後どうしようなんて、想像して覚悟しなきゃいけなかったんだ。


俺は子供で、両親の方がどれだけ悲しんでいたか、当時は考える事すら出来なかった。

ただただ、妹が死んだ事が悲しくて、ずっとずっとうずくまって泣いていた。

通夜が終わって、葬式が終わって、四十九日が終わっても、ずっと。

その法事の集まりの中に、もちろん、桜子もいた。
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