君の声が、僕を呼ぶまで
新卒で赴任した1年目の終わりごろ。

保健室の常連だった山崎さんが、倒れて入院した。


死に至るような病気ではないものの、小さい頃から入退院を繰り返していた子。

明るく振る舞い、甘えたところもあるのが、どことなく、空と似ていた。

何より、学校に憧れているところが。

彼女が入院してしまって、俺は本人と同じくらい不安になっていたかもしれない。

病気に負けて、学校を辞めてしまわないか、不安だった。


春になり、中学の時に苛めを受けて、声を閉ざしてしまった子が入学してきた。

それでも高校には行きたいって、まずは保健室に通う事になって。


でも、どう接していけばいいんだろう。

空なら「頑張れ、頑張れ」って応援するのかな。

俺は、何も言えず、ただ微笑んでいるしか出来なかった。


彼女が、傷付いた雛鳥を連れてきた。

多分、巣から落ちて、親兄弟に捨てられたんだろう。

治療してあげたとして、この世界で生きていけるだろうか…。


…ふと、怖くなった。

この子は、山崎さんや空と違って、悲観しているところが強い。

人を拒絶し、生きる事に絶望を感じているような。
< 277 / 389 >

この作品をシェア

pagetop