君の声が、僕を呼ぶまで
桜子は、空の面影を少しだけ残して、空が死んだ時の俺と同じ年齢になっていた。


「空が生きていたら、こんな感じだったのかなぁ」

俺がふと呟くと、

「どうだろうね」

と、保健室で雑務を手伝ってくれていた桜子が答える。


俺は泣かなくなった。

桜子も、空の代わりの役目を終えた。

残ったのは、空の面影と、「雪兄ぃ」という呼び方だけ。


その桜子が、冬島君の事を、愛しそうな目で見ている。

どこか、切なくて苦しくて、でもやっぱり愛しそうに。


もっと怖くなった。

桜子が、いなくなる。

空に似た目で、他の男を見つめて、顔を赤くしている。


桜子も、いなくなるのか?

ダメだ、空みたいにいなくならないでくれ。

空の代わりをしてくれるって言ったじゃないか!


俺は、空の代わりに桜子を…
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