君の声が、僕を呼ぶまで
ピタっと立ち止まった彼女は、ゆっくりと…ゆっくりと振り向いた。


けれど、その視線の先は僕ではない。

さっき佇んでいたところの足元を見ている。


誘われるようにその視線の先を追うと、小さな雛鳥がうずくまっていた。

「あ、怪我してるんだ…」

羽の付け根に、血が滲んでいる。


僕が雛鳥に近付こうとすると、彼女は距離を取るように後ずさりをした。


「…ごめん、嫌なら近付かないから…」

僕が足を止めると、目線は逸らしたまま、一歩、雛鳥の方へ戻って来た。
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