君の声が、僕を呼ぶまで
パァンという音が保健室に響いた。

遅れてやってくる、頬の痛み。

更に遅れて、意識が今に戻って来る。


「雪兄ぃのバカ!!」

俺の腕から抜け出した桜子に、思いっきり引っ叩かれていた。


「桜子…?」

「雪兄ぃは、私に執着してるだけだよ! 空ちゃんに似ている私が、他の誰かを好きになったりして、離れていくのが気に食わないだけのワガママな子供なの! 私に空ちゃんを重ねてるだけなの!」


…言わないでくれ。

…本当は心のどこかで気付いていながら、抑えられなかった俺の心を暴かないでくれ。

…だって、俺は空を守れなかったから、代わりに桜子を守りたくて…


「…ねぇ、雪兄ぃ。何で、カウンセラーの資格を持つ保健の先生になったのか、覚えてないの?」

桜子が、本当に悲しそうな目をして言う。


「どうして、今するべき事が分からないの? どうして小春と華ちゃんを守ってあげないの? それが雪兄ぃの夢だったでしょ?」
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