君の声が、僕を呼ぶまで

●泥んこだらけの、華の足跡

いけない事だとは分かってたもん。

でも、間違ってる事だとは、思わない。

人を傷付けてでも、手に入れたいものってあるでしょ?

奪わなきゃ、手に入らないものだって。

闘わなきゃ、奪い返せないものだって。


それが、その人をどれだけ傷付けるかは分かっていても。

それを、自分で処理できないようじゃ、ここで華が手を抜いたって、どうせこの先、どっかで終わるだけ。


何も奪えず。

何も手に入らず。

何も守れず。


華は、小さい頃に、「仕方ない」って何度も思ってきた。

それは、我慢と泣き寝入りを通り越した、諦め。

そうしないと、苦しい想いをするのは自分だったから。


でも、きっと、心の奥底では、もっと苦しい想いをしてた。

諦めたら、何も手に入らない。

諦めたら、与えられたものさえ、守れない。


華は、もう諦めないよ。

奪われた自分の居場所を取り戻す戦いなんだから。

それでもなお、奪われた側の華が悪いっていうの?
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