君の声が、僕を呼ぶまで
「確かに、時には誰かを蹴落としたり、傷付けたりする事もあると思う」

「でもそれは、戦いではなく、一方的な侵略と略奪なんだよ」


「そうやって手に入れた場所は、いつかまた自分も誰かに奪われるかもしれない」

「人を傷付けて攻めて手に入れたものと、守って手に入れたものは違うから」


「攻めて手に入れたものは、人に奪われたり、奪い返されたりしないかって脅えてなきゃいけないし」

「でも守って手に入れたものは、きっと、自分も大事に出来るし、人も大事にしてくれると思う」


「山崎さんも、保健室という場所を与えられたのがきっかけかもしれないけど、最初は奪って手に入れたんじゃないでしょ? だからこそ、大事に守ろうって思えたんでしょ?」

「その守りたいものの中に、俺がいたんだよ」


「そして、そこに小春ちゃんもいたんだよ。小春ちゃんが後から来たから異物のように感じたかもしれないけど、世界は、自分と他人で出来ているから」

「居場所があって守り続けても、そこに誰も寄せ付けなかったら、それは誰もいない1人ぼっちの世界と同じなんだよ」
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