君の声が、僕を呼ぶまで
…同意してくれたのかな…

相変わらず、顔をそむけたままなので、表情がよめない。


「あ、でも、保健室の場所が分からないや…」

彼女のタイの色は、僕と同じ赤…つまり、新入生だ。

きっと、彼女だって、保健室の場所はまだ分かっていない。


また堂々巡りの振り出しに戻るのかと頭を悩ませたその時、彼女は中庭に面している窓ガラスの一枚を、コンコンとノックした。


ほどなくして、白衣を着た男性が、窓を開けて身を乗り出してきた。

「どうしたの?小春ちゃ…相川さん」


保健の先生だろうか。

心配そうに彼女に声をかけたが、僕の存在に気付いて彼女の名を呼び直す。
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