君の声が、僕を呼ぶまで
僕の手を振り払って目を逸らした沙羅は、あれ以来、笑ってなかった。

笑っていたけど、目が笑ってなかった。


きっと、ずっと怒ってたんだろう。

僕を苛めてたヤツらに対して。

きっと、ずっと許せなかったんだろう。

僕に傷を付けた、自分の事を。


小さい頃から一緒にいたから分かるんだ。

僕から目を離している時の沙羅が、どんな目をしているのか。

同じように。

沙羅から目を離している時の僕が、どんな目をしているのか。

目を合わせない事で、お互いに、どんな目をして、どんな気持ちなのかが、手に取るように分かってた。


だから、沙羅の、後悔も、罪悪感も、憤慨も、汲み取ろうと思ったんだ。

なかった事にして、傍観者に回られていたら、きっと他のやつらと同じと思わざるをえなかっただろうけど。


あとは、やっぱりちょっとだけ、幼馴染のよしみと色眼鏡もあったかな…。
< 301 / 389 >

この作品をシェア

pagetop