君の声が、僕を呼ぶまで
例え、追いかけていたとしても、その手を掴む事が出来ただろうか。


沙羅とは違う、心の底から拒絶して、手を払いのけられた入学式。

僕は、彼女に惹かれながら、どこかで、恐れてもいた。


そんな彼女に対して、一度払いのけられたとしても、何度も手を差し出せるほど、僕は強くない。

何か出来るわけじゃない。

僕は、僕が思っている以上に、無力なんだ。


沙羅は言葉を濁すし、山崎さんは当然だろうけど、罪悪感を塗りたくったような顔をして、言葉を紡がない。

それでも、相川さんの世界の境界線ギリギリに立っている人達が、彼女の力になって、今回の事は、とりあえず表面上だけでも収束したって聞いた。

そこに、僕だけいなかった。


そもそも僕は、彼女に名前どころか、顔も覚えられてない。

知られていない。

彼女の世界の境界線どころか、彼女の世界に存在すらしていない。

排除されたわけでもなく、最初からいないんだ。
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