君の声が、僕を呼ぶまで
彼女は、彼女の世界の広さを創り上げてしまっていて、そう簡単にそれが広がる事はないと、僕は分かっていた。

それなら、自分から、彼女の世界の境界線に近付かなきゃいけなかった。

彼女の世界の引力に惹かれるままに。


それは無理だと、彼女の世界を壊すと、思っていた。

だけど、どうだろう。


気が付いたら、何人かが、彼女の周りに立っている。

ずっとずっと見てた僕よりも、ずっとずっと近くに。

やっぱり僕は無力で弱くて情けない。


僕は僕を守るためだけに、彼女を傷付けもしない、彼女の為に何かする事もしない、傍観者になっていたんだ。


居場所がない自分を守るだけの戦いなんて、本当に無意味だ。
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