君の声が、僕を呼ぶまで
【サクラ】が、少し遠くを見ながら、

「【サラ】が小春かもしれないって気になり出したら、あのルームのログを遡らなきゃ気が済まなかったし。そうやって実際に身近にいたって分かると、【アキ】の事も、僅かでも重なる事があったら、この人じゃないかって思っちゃうもんなんだね」

そう言って、フフッと小さく笑った。


「【アキ】も、【サラ】が小春だって気付いたから、あの時、自分も傷付いた過去があるって言ったんでしょ?」

「そうだけど…それには何の意味もなかった」

「何で?」


「画面の中で【アキ】と弱さを擦り合わせたって、【サラ】は少し気が休まるのかもしれないけど、相川さんはどう思うか分からない」

そうだ、彼女が本当に求めているのは…。


「現実は彼女に重くのしかかって、僕は彼女がそれで苦しんでいるのを現実で見てるのに、同じ弱さを持つ【アキ】は僕だよって言えなかった。【サクラ】と一緒に、あそこで【サラ】の味方をしてるのは僕だよ、ここにいるよって言えなかった」

自分の言葉が自分に突き刺さる。

「現実の僕は、もっと無力だ…」
< 309 / 389 >

この作品をシェア

pagetop