君の声が、僕を呼ぶまで
「小春、今日はもう保健室行こうか」

桜子ちゃんが声をかけてくれて、私はようやく、自分の意識を現実に戻す。

廊下からも教室からも聞こえてくる賑やかな話し声。

私の壊れそうなほどにうるさい心臓の音なんか、かき消されてしまう世界。

「頑張ったと思うよ、きっと雪兄ぃもそう言ってくれる」


さっき昇った階段を降りる事の、なんて簡単な事か。

桜子ちゃんの言った通り、雪人先生は、「よく頑張ったね」って言ってくれた。


「じゃ、また放課後ね」

「ありがとうね、植木さん」

私の代わりに雪人先生がお礼を言う。

「塚原先生のためにやってるんじゃありませんからー」

桜子ちゃんは、わざと冷たく言ってるみたい。


「…桜子、スカートめくれてる」

「えっ、嘘っ、やだっ」

「嘘ですよ?」

「っっ雪兄ぃのバカ!」

ニヤニヤ笑っている雪人先生に向かって、悔しそうに叫んで、桜子ちゃんは教室へ戻って行った。

仲良しで楽しそう。
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