君の声が、僕を呼ぶまで
「…あっ、ご、ごめんっ…!」

何故だろう、彼の方が動揺している気がする。

それが、妙に私を冷静にさせる。


「すぐ…あっち、行く、からっ」

慌ててユーターンした彼は、見事に転んだ。

「いったぁ…」

あ、擦りむいた手の平から血が出てる…。


どう、しよう。

どうしようもこうしようも、私に出来る事なんてない。

というか、ちょっと桜子ちゃんや沙羅ちゃんと一緒にいれるようになったからって、放課後で誰もいないとはいえ、ちょっと教室に入れたからって、私の人に対する恐怖は、そんなに薄らいでない。

自分で自分が調子に乗っていた事を思い知らされる。

このまま、彼が去るのを待つのが一番だ。


そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼は、また、

「ごめん、ほんと、すぐあっち行くからっ」

と体を起こす。

…そして、また転んだ。
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