君の声が、僕を呼ぶまで
よく分からないけど、私のために、早くあっちに行こうとしてくれて。

そして、手の平から、血を流して。


ポケットの中に、絆創膏がある。

お母さんが買ってくれた、ピンク地がカラフルな黒ネコ柄の、絆創膏。

お守りって入学した頃に持たせてくれて、でも20枚1セットだから、すぐになくなっちゃって。

その度に買い足してくれてた絆創膏。

でも、メーカーが生産しなくなったのかな、もう売ってないって、お母さんが残念そうに言ってた。


だから、これが最後の1枚。

最後のお守り。

…それに願掛けするのも悪くないかなって思った。


今日はいっぱい頑張ったもの。

明日も頑張りたい。

人は怖いけど、何となくだけど、彼みたいに自分を傷付けない人間もいるんだって思ったから。

そういう人に優しくする自分でありたい。


勢いとタイミングが大事だから…私は最後の1枚の絆創膏を彼に差し出した。

やっぱり手は震えるし、彼の顔を見る事は出来ない。

それでも、受け取ってもらえるなら…。
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