君の声が、僕を呼ぶまで
「これ、入学式の日に貰ったんだ」

…普通のならまだしも、同じファンシーな絆創膏を持っている人なんて、そんなにいるもんなのかな…


「僕、入学式の日、友達もいなくて不安で、しかも迷っちゃって中庭に着いちゃって。そこで、傷付いた雛鳥を救おうとしてた女の子に出逢って」

…その雛鳥を私は知っている。


「僕がその子を驚かせちゃって、誤って手の平を引っかかれちゃって。その子はすごく申し訳なさそうな顔して、この絆創膏をくれたんだ」

…雪人先生が私の代わりに渡してくれたような気がする。


「不安だらけだったけど、その子が震えながらも頑張って優しくしてくれたおかげで、僕も頑張ろうって思えたんだ。だから、この絆創膏は僕のお守りなんだ」

…あの時、引っ掻いてしまった男の子の心に、取り返しのつかないくらい、大きな傷を負わせてしまっていたらどうしようって思った記憶がある。


血が出ている彼の手の平に触れてみた。

「…わぁっ!?」

彼は、ひどく驚いている。
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