君の声が、僕を呼ぶまで
…緊張、不安、恐怖


他人に対して抱くそのマイナス感情に、僕はひどく既視感を覚えた。

せめて、彼女の手に触れないように…


そう注意していたのに、不安定な感情というのは、どうしてこうも伝染しやすいのだろう。


先にビクっと跳ねたのは僕の手。

その拍子に、軽く彼女の手に触れてしまった。


軽く軽く、けれど、彼女の反応は異常なくらいに重たく、反射的だから仕方ないとはいえ、僕の手の平に爪痕がついた。


「君、大丈夫?」

先生が、驚いたふうではなく、落ち着いた声色で尋ねる。


…大したことない軽い傷なのに、何故かとても重たい。
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