君の声が、僕を呼ぶまで
僕は地面に落ちたハンカチを拾って雛鳥を包み、窓ガラス越しに、先生に預けた。

最初からこうすれば良かったんだろう。


「ありがとう、君も消毒…あれ、口元も切れてるよ」

「大丈夫です」


そのやり取りを、罪悪感が張り付いた表情で、彼女が見ていた。

おどおどと視線を彷徨わせた後、彼女は先生に、黙ったままさっきの絆創膏を渡す。


先生は、少しだけ苦笑しながら、その絆創膏を僕に渡す。

「はい、ごめんね、だって」


渡されたカラフルな絆創膏を、僕も黙って見つめる。

ピンク地に、黒ネコ柄の、絆創膏。
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