君の声が、僕を呼ぶまで
「ねぇ、いつでも、どこでも、味方だって事、覚えていてほしい。そして、世界はきっと君にも僕にも美しく、優しいモノだから」

飯田君が、私の耳元で聞き覚えのある言葉を囁いた。


その声も、少し震えていた。

彼も、人を、世界を恐れてきたんだよね。

でも、逃げないって、決めたんだよね。


…そうだよね、本当にずっと見守ってくれてたんだ。

……気付くのが遅くなってごめんね、【アキ】…


足りないものは、勇気。

そう思っていた。

でも、今より少し幼かったあの日に堕ちた、暗く閉ざした自分だけの世界で、勇気を生み出すのは難しかった。

足りなかったものは、勇気と、それを与えてくれてる人に気付く力と信じる力。


このドアの向こうに、私の新しい再生の世界が広がっている。

その先に、たくさんの笑顔が待ってくれている。


だから、頑張れ、今の私。

ドアにかけた手に力を入れる。

今度こそ、無音の世界を抜け出して、過去を踏み抜く音を鳴らせ。
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