君の声が、僕を呼ぶまで
彼が、一瞬だけ、目を背けた。

何かを確かめるように頷いた彼は、再び、こちらを見る。


頬が少し赤い。

どこか、彼の目も、不安の色で揺れ動いているようなイメージを持ってた。


だけど、今はしっかり、真っ直ぐ、私を見ている。

だけど、どうしだろう。

泣きそうな顔をしているようにも見える。


私より、先に、それに気付いたみたいに、沙羅ちゃんが、

「智秋も、いっぱい、頑張ったよね」

と、同じように、泣きそうな顔で言った。


「…う、…ん。」

飯田君は、涙を堪えるように、絞り出すような声で答えた。
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