君の声が、僕を呼ぶまで

そうだ、飯田君は…【アキ】は、どこか傷を抱えていた。


私が…【サラ】が、崩れ落ちたあの日以来、【アキ】はしばらく、ROOMに顔を出さなかった。


【アキ】は、逃げててごめんって謝ってた。

でもそれは、【サラ】が…私が、苦しんでいるのを知ってたから。

私に自分を重ねて、【アキ】も苦しんでたんだろう。

私によって、強制的に、傷を閉じ込めていた世界に引き戻されていたんだろう。


それが、どんなにキツイ事か、私は知っている。

周りを拒んで、自分しか見えない、自分すら消えてしまいそうな世界。


そこから抜け出す事の難しさ。

そこから、誰かを助けたいと思うまでに暗い世界を越えてなお、他人の世界に触れようとする事の難しさ。


それを越えるのは、勇気と強さ、そして優しさと愛しさ。