君の声が、僕を呼ぶまで

●陽太の春を、桜子は待つ

「冬島先輩、今日も塾ですか?」

「冬休み明けには、もう受験だからなぁ…」

「そっか、大変ですね…」

「植木さんも、来年の今頃には我が身だよ」

「うぅ、確かに…」

「ま、それまでは、大いに部活に励んでくださいと、元部長から現部長へのアドバイスです」

「…励める環境があれば、こんなふうに早々と帰ってないんですけどね…」

「あぁ、相変わらず冷遇されてる悲しき我が古巣である事よ…」

「でも、春になるのが楽しみです」

「何で?」

「あのコート、桜の樹に囲まれてるから」

「そういえばそうだね。唯一の自慢かも」

「初めて見た時、感動しました」

「入部した日?」

「いいえ、それよりもうちょっと前の、まだ蕾だった時です」
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