君の声が、僕を呼ぶまで
「蕾に感動したの? って事は、それ、入学前じゃない?」

「はい」

「んん…? いろいろとよく分からないかも?」

「桜が、綺麗だと、言った人がいるんです」

「咲いてないのに?」

「受験の下見に来た時、ついでにテニスコートも見ておこうって思ったら、迷っちゃって」

「あぁ、確かに追いやられた辺鄙なとこにあるしなぁ」

「その時に、声をかけてくれた人がいて。コートまで連れてってくれて」

「お、親切なヤツがいて良かったな」

「はい、それで『桜、綺麗だね』と」

「え、咲いてなかったんでしょ?」

「そうです。で、名前教えてくれって」

「げ、ナンパとか、やっぱ軽いヤツじゃん」
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