君の声が、僕を呼ぶまで
「俺、沙羅のそういう優しいとこも、好きだよ」

「…知ってます」

「華の甘ったれたとこも、俺が面倒みてやんなきゃなぁって思ってた」

「…はい」

「植木さんは、しっかりしてるよね」

「可愛げがないって、よく言われます」

「あとさ、俺の事、嫌いだったよね」

「…えぇ!?」

「入部してからずっと、俺の事、すごい暗くて冷たい目で見てた」

「えっと、それは、あの…っ」

「でも、何だか、理由が分かった気がする」

「え…」

「せっかくの綺麗な名前、俺、呼んでやらなかったもんな」

「そ、れは…」

「うちの部活に入るって約束して頑張って受かってくれたのに、綺麗だって言った名前どころか顔さえ覚えてない男の事なんか、そりゃ嫌いになるよなぁ」

「覚えてたんですか…?」

「ううん、ごめん。さっきの話聞いて、何となく心当たりがあるなぁって、そんなレベル」

「ですよね、いちいちそんな事、覚えてられませんよね」
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