君の声が、僕を呼ぶまで
「塾の前に、ただの後輩と、わざとこんなのんびり下校するほど、俺、時間にも学力にも余裕ないんだけど」

「えっ、あっ、すみません…?」

「ほんと、今は余裕ないけどさ。だから、頑張ってサクラ咲かせるから。そしたら、桜の季節に、迎えに行ってもいいかな。桜を」

「…先輩…」

「ん?」

「桜って、連呼したいだけですよね…?」

「ち、違う!」

「今度は、本当に私が待ってていいんですか…?」

「うん、ずっと待たせちゃってたから、今更かもだけど…」

「…大丈夫です、私、履歴書の特技欄に書けるほど、待つのは得意なんです」

「…っくく、何それ」

「今、増えた、私の期間限定の特技です」

「…うん、採用」

「…期間限定って事、忘れないでくださいね」

「…やっぱ、しっかりしてるよ、桜は」

「先輩のおかげで、私にとって【サクラ】って名前は特別になったんですよ」

「…よく分かんないけど、それで喜んでくれるなら、これから何度だって呼ぶから」
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