君の声が、僕を呼ぶまで
「智秋も、早く」

そう言って、小春が僕の手を握った。


小春の手に、あの日のクタクタの絆創膏は、もうない。

小春が持っていた、最後の1枚は。

小春が僕に、お礼だから持ってて欲しいと、渡してくれた。


そのクタクタになった絆創膏は、僕のポケットに常に入ってる。

繋いでいる手と逆の手をポケットに入れて、その絆創膏に触れてみる。


「ありがとう」

どこからともなく聞こえた声。


「…え?」

僕が小春を見ると、不思議そうな顔をしてる。


「暖かいね」

小春が僕の隣で笑う。


「…うん、そうだね」

世界は、こんなにも、優しく綺麗で、暖かい。
< 387 / 389 >

この作品をシェア

pagetop