君の声が、僕を呼ぶまで
「今年の桜も、もう終わりだね」

ボンヤリ外を眺めていると、書類を整理していた手を休めて、雪人先生が話しかけてきた。

私は逆に、焦って、教科書を開く。

それを見た雪人先生は、

「いいよいいよ、新学期始まったばかりなんだし、1年の復習からゆっくりやっていこう」

と、デスクワークの時だけかける黒縁メガネを外して、わざとらしいくらい、大きく背伸びと欠伸をした。


…いいのかなぁ、ただでさえ皆より遅れてるのに、こんなノンビリしてて…

先生の前で堂々とサボるのも、何だか気が引ける。

こんなのは今に始まった事ではないのだけど、やっぱり一年経っても手持無沙汰感には慣れない。


「新学期は先生の方が大変なんだよね、書類が多くて。誰か手伝ってくれないかな~。隣に座って、一枚一枚、渡してくれるだけでも助かるんだけどな~」


先生のお墨付きで、堂々とサボれる理由が…

いや、これは私に課せられた、勉強よりも大事な使命なんだ!
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