君の声が、僕を呼ぶまで
もうすぐ、梅雨。

肩身の狭い廃れた軟式テニス部が、雨の日に体育館を借りて筋トレしたいだなんて、他の部活からの風当たりが強い。

…と、去年の部長、冬島先輩のぼやきを聞いて、何となく察していた。


学級委員も、部長も、断る理由がないので、引き受けた。

「しっかりしている」と、昔からよく言われるタイプではあるけれど。

さっき沙羅にも言ったように、大変だと思わなければ、そこまで大変じゃない。

ただ、勝ち目の低い交渉事に臨まなければならないと思うと、今から気が重い。


とりあえず、早くこの用事を済ませてしまおう。

「失礼しま…」


「小春ちゃん、よく頑張ったねぇ」

「…ぁす…」

私は、無意識に語尾を弱めた。



「あ、植木さん」


雪兄ぃが、保健室のドアを開けた私に気付いて、声をかける。

その隣で、控え目にだけれど、嬉しそうに笑う女の子がいた。


…相川、小春、さんだ。
< 52 / 389 >

この作品をシェア

pagetop