君の声が、僕を呼ぶまで
「あ、お話し中に入って来ちゃってごめんなさい…」

別に悪い事はしていないのだが、何となく、動いて喋っている相川さんを見てしまったという気持ちになった。


…機織り中の鶴じゃあるまいし…

と、自分でツッコミを入れてしまうくらいに、些細な事だと片付けようとしたが、向こうはそうではなかったらしい。



慌てふためいて、持っていたカバンで顔を隠し、明らかに挙動不審になっている。

さっき、雪兄ぃの前で見せていた赤い頬は、今はもう青ざめてしまっているかもしれない。



さっきの罪悪感は、あながち間違っていなかったんだと思った。

あの笑顔をいきなり他人に見られても動じないのなら、きっと、もうクラスへ復帰出来ているんだろうから。


…知られたくない言葉、見られたくない顔
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