君の声が、僕を呼ぶまで
「……っ」


言葉が、うまく出てこない。

喉元で、何かがもどかしくもたついているような感覚。

唇近くまで上がってきては、また喉へと降りて、どんな言葉で返せばいいのか分からない。


それよりも、俺が言葉を返すよりも、もっと…


「あのぉ…ダメでしたか?」

俺の意識を急激に呼び戻す、その鈴のような音色の声。

くりくりとした大きな瞳が、不安そうにこっちを見ている。


そう、もっと…


「…うん、ベスト…」

「本当ですか、やったぁ」
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