君の声が、僕を呼ぶまで

――――――

「いったぁ…」

1年前の出逢いを反すうして目を離していた隙に、沙羅が転んで足を擦りむいたようだ。


「おい、大丈夫か、沙羅」

「あ、陽太先輩、んー、大丈夫です」


ふにゃっと笑うが、砂利のコートで転ぶと、傷口がえげつない。

滲み出るはずの血は、砂埃でコーティングされた傷口で押しとどめられている。

ばい菌だって入りやすい。


「保健室、行くか」

「そうですね、行ってきます」

「俺、一緒に…」

「陽太先輩は、受験勉強の息抜きで来てるんだから、ゆっくりしていってください」


…そんなの、半分口実だって、気付かないんだからなぁ
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