君の声が、僕を呼ぶまで
「よっこらせ…っいったぁ!」

沙羅が体勢を崩したので、慌てて抱き留める。


「どうした?」

「…足、捻ったみたいです…」

膝の擦り傷とは別に、足首の方が少し赤くなっている。


「ほら、連れてってやるから」

俺が、背負おうとしてかがむと、沙羅が慌てる。

「い、いいですって」


「ばぁか、捻挫なめんな。そこから段々と腐食が始まって、神経を食い散らかして、やがて…」

「え…嘘…」

「嘘だよ」

「もう、陽太先輩!」


「でも、放っておくと酷くなるのはマジだから。大人しく、連れてかれろ」

「…はい、失礼します」


ようやく、沙羅は素直に俺に従う気になったようだ。
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