君の声が、僕を呼ぶまで
沙羅を背負って、保健室の方へと歩き出す。


「陽太先輩、すみません、ほんと…」

「いいって、こんくらい、今に始まった事じゃないだろ」

「うぅ…私も桜子みたいに、しっかりした人になりたいなぁ」

「そうだな、植木さん、何でもそつなくこなすから、ほんと凄いよな」


沙羅を背負って両手が塞がっているので、保健室のドアを爪先で引っ掻けて開けた。


「あれ、塚原先生、いないな」

「本当ですね、まだ桜子のとこなのかな」

「仕方ないな、先に消毒するぞ」


沙羅を椅子に座らせて、脱脂綿に消毒液を滲みこませる。

それをピンセットでつまみ、そっと膝の傷口へ当てる。
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