君の声が、僕を呼ぶまで
「っ…」

「わり、滲みた?」

「陽太先輩のせいじゃない…ですから」


滲みるのを我慢して強がる声が…可愛い。

「…っ…」


その声をもっと聴きたいから、わざと…

じゃない。

と、思う。


俺は、ゆっくりゆっくり、脱脂綿で沙羅の傷口を撫でる。

その度に、沙羅が少しだけ、声と足を震わせる。


それが本当に可愛くて、ゆっくり何度も繰り返し撫でているのは、その顔をもっと見たいからわざと…

じゃない。

と、思いたい。


ガーゼを当てて絆創膏で止めると、沙羅が「ふぅ」と息を吐いた。

滲みる痛みに身構えて、肩に力が入っていたんだろう。
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