君の声が、僕を呼ぶまで

●冬の陽の中、芽吹いた桜を、覆う雪

…これだから、最近の高校生は。

年中、どこでも盛りやがって。


俺の時も、そうだったっけ?

あぁ、あの頃の事は、よく覚えてないな。

というか、あまり思い出したくない。


俺があまりにも泣いてるもんだから、すっげー小さい桜子が、小さいなりに心配して、隣に座ってたっけ。


仕方ない、と、俺は溜息をついた後、背筋を伸ばす。

ドアの向こうの雰囲気を察し、ちょうどいい頃合いを見計らって、わざと大きな声を出した。


「は~、疲れたなぁ。書類は後回しにして、お茶でも飲もうかな」

そして、ワンテンポ置いて、保健室のドアを開けた。


「…あれ、お客さんがいたのか。ごめんごめん、ちょっと用事で出てて」

「塚原先生…」


いかにも、たった今、慌てて離れましたという距離感。

2人とも顔は赤いし、ほんと、保健室だからって、雰囲気に呑まれて盛り過ぎ。
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