君の声が、僕を呼ぶまで
●桜子と、苛立つアイツ
何が気に食わないのか、最初は分からなかった。
ただ、ただ、彼に名前を呼ばれるだけで湧き上がってくる苛立ち。
今思えば、本当は気付いていた。
だけど、気付かない方が幸せだと、傷付かないと、防衛本能が働いていたのだから、人間とは恐ろしい。
「沙羅、おつかれさん」
1つ上の冬島先輩が、そう言って沙羅に微笑みかける。
「あ、陽太先輩、もうあがるんですかー?」
ボールを拾っていた手を止めて、沙羅が顔を上げた。
ただ、ただ、彼に名前を呼ばれるだけで湧き上がってくる苛立ち。
今思えば、本当は気付いていた。
だけど、気付かない方が幸せだと、傷付かないと、防衛本能が働いていたのだから、人間とは恐ろしい。
「沙羅、おつかれさん」
1つ上の冬島先輩が、そう言って沙羅に微笑みかける。
「あ、陽太先輩、もうあがるんですかー?」
ボールを拾っていた手を止めて、沙羅が顔を上げた。