幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!
さっきまでドキドキしっぱなしだったのに、不意を突かれて年下の飛駒の部分を見てしまった。なのに、ドキドキと速足の脈拍は落ちつくことはなかった。
瞳さんの病院に到着してからも、それは変わらず。
深呼吸して、息を整えてから病室へ入らなければ。
絶対安静の瞳さんに心配をかけるわけにはいかないからね。
いつも何時に行くから必要なモノがあればと、前日に連絡しといているので急で脅かすわけではないけど、エレベーターに乗ってから移る自分の挙動不審さには瞳さんを焦らせるかもしれない。
ノックして『美結です』と告げてからドアを開けようとしたら、勢いよくスライドされた。
「葵! 美結!」
「きゃああっ」
抱き締められて一歩後ずさると、背中に乗っていた葵くんが飛び起きた。
ふわりと漂う香水や、私だと分かって躊躇なく抱きついてくるこの人を、葵くんはキラキラした目で見上げていた。
「パパ!」
「ああ。パパだよ。二つも商談を後輩や社長に押し付けて帰って来たよ」
「えー、ぱぱーすごーい!」
ひょういっと簡単に葵くんを抱き抱えたお兄ちゃんは、葵くんの尊敬のまなざしを見て全く悪びれもせずに頷く。
「まあな。愛する瞳と葵の為だから」