幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!
「部屋の鍵、ちょうだい」
ん、と手を伸ばされて立ちつくす。
一歳年下の幼馴染は、昔の面影を残しつつも誰もが振り返るぐらいイケメンに成長していた。
「はやく、――ちょうだい」
甘く強請る。
彼は忘れたのだろうか。
昔、私を泣かせては笑っていた悪ガキだったことを。
「い、嫌にきまってるじゃん。馬鹿なの?」
「馬鹿じゃないよ。もういいかなって腹をくくっただけ」
催促するように手が近づく。
それに露骨に眉をしかめてしまった。
確かに、昔の記憶が無いまっさらな状態で、初めて会う人物だったならば、このイケメンの差し出された手にときめいたかもしれない。
でもいくらイケメンでも、目の前に居るのはあの頃の意地悪な飛駒だ。
だから、――ダメだ。
リセットなしに飛駒と仲良くなんてできるはずもない。
甥っ子を抱っこすると、私は幼馴染から逃げた。
それでもとっくに心は捕まえられていたのかもしれない。