幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!
お風呂を洗い終わり、ふとキッチンを見て戸惑う。
家族で使う用のフライパンや食器は、海外に行く時に粗方キッチンの上の戸棚に移動して、私の一人用のフライパンを持ちこんで使わせて貰っていた。
葵くんと二人のご飯なら、一人用のままでいいけれど――もし。
もし万が一、ここに飛駒が来るとなると大きい調理器具の方がいいよね?
「どうか、それだけは勘弁を」
あんな整った顔立ちの飛駒に、朝ノーメイクの自分を見られたりとか無理だし、……葵くんを安心させるために恋人のふりを24時間とかも無理。
絶対に無理―!
10年近く会ってなかったんだから幼馴染って言い方も違うかもしれない。
「よ、よし。葵くん、あと10分でお風呂が――」
パタパタと慌てて戻ってみると、ソファの上でタオルケットに包まり、クッションを枕に眠っている葵くんの姿があった。
いつもならとっくに眠っている時間だったのかもしれない。
色々あって緊張していたのを、やっと今、安心できたのかも。
ソファから静かに抱きかかえて、私の借りている客間のベッドに寝かせた。