幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!
「葵くんは全然! もっと大きくなっていいんだよ。さ、ご飯食べよう」
「俺は美結の手作りが食べたいな」
「……?」
葵くんの声にしては、低くて甘く掠れて生意気そうで人を小馬鹿にしたような言い方。
肩にしがみつく葵くんから視線を上げると、足が見えた。
色落ちしたダメージジーンズと、ごつごつした大きな靴。
恐る恐る顔を上げると、手に大きな紙袋と旅行用の大きな鞄を持った男が立っていた。
長い手足、深いブラウンの色の鋭い目。
人を見てニヤニヤ笑う口元にある、色気がただもれの黒子。
色素の薄い茶色掛った髪を揺らし、私を見下ろしているこの男は。
「飛駒(ひこま)」
「お、ちゃんと覚えてくれてたか」
10年ぶりの再会なのに、まるで昨日まで一緒の学校に通っていたような雰囲気。
実家に帰る時期もずれてたし、お兄ちゃん達の海外挙式も研修で来れなかったから、本当に久しぶりなのに。