幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!
四、乗り越えないといけないもの。


「パパ、かえってくるって」

瞳さんの病室へ向かうと、興奮して葵くんが抱きついてきた。
瞳さんも少しだけ顔色が良くて葵くんと一緒にハイタッチしている。

「お兄ちゃん帰ってくるの?」
「一時帰国なんだけど、こっちの部署に回して貰えるように挨拶したり手続きして、また向こうで引き継ぎ終わらせて――って」

「引き継ぎと部署移動を同時進行するつもりか。やっぱあの人バケモノだわ」

飛駒は面白くなさそうに言う。

飛駒にとって兄は、目の上のたんこぶであり、敵わない存在で大の苦手なのが伺える。

「じゃあ私はその日、実家に戻ろうかなあ。土日だけ?」

「一週間は居てくれるみたいなんだけど、忙しいみたいで……。倒れないか心配で、もし美結ちゃんさえ嫌じゃなかったらマンションで一緒に居てもらえないかしら」

お兄ちゃんはちょっと過保護だけど別に嫌な存在ではない。
私は迷惑ではないけれど、飛駒には違う。
ちらりと見上げると、不機嫌そうに眉を寄せている。

「俺もいる」

「え」

「俺もいる。どうせ義兄さんは仕事で駆けずり回るなら、葵のサポートは引き続き俺もする」

私も瞳さんも、飛駒は絶対に帰ると思っていたので目をぱちぱちさせて言葉を失う。
お兄ちゃん達の結婚式さえ来ないような人なのに。

「今回は逃げる気はねえからな」

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