【溺愛症候群】

2-13 残される、乳白。




「ハユ、刺身やる」


 その言葉と共に目の前に突き出された刺身の器を、左に突き返す。


「自分で食え」


 皿の上できれいに盛られた鮪や烏賊や鯛が、淋しげに艶々と光を反射させる。


「俺、生魚嫌いだもん」

「だもん、とか可愛く言ってもダメ」


 小首傾げて上目遣いでこっち見ても、大の男がやったら気持ち悪いから却下。

 じゃあ女子がやったら可愛いのか、という考えは頭から追い出す。




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